先日、Emacsに一生入門できねえ2020という記事を目にした。 確かにEmacsは難しい。まったくもって増田の言う通りだ。うんうんと頷きながら、過去に自分が書いた「風になりたい奴だけが Emacs を使えばいい。」という記事が脳裏に浮かんだ。 10年間の出来事 # 僕が「風になりたい奴だけがEmacsを使えばいい」と言った記事は2010年9月4日に投稿されていて、あれから実に10年の月日が経過していた。とても懐しい。 振り返ればこの10年間でエディタの世界は大きく変わった。次世代エディタを銘打ったAtomが誕生し、エディタにおける表現の限界をぶち壊した。そして後続で登場したVSCodeが一気にシェアを奪い、一瞬でトップシェアの座に立ってしまった。予想しなかった未来があった。 一方、Emacsはどうなったかと言えば、メジャーバージョンが23から27になった。しかし、起動したてのEmacsはまるで時が止まっているかのように見た目に変化がなく、表面からのぞかせるEmacsの顔は驚くほど何も変化していなかった。 2010年10月のEmacs 2020年9月のEmacs Emacsは荒木飛呂彦 # この10年、見た目がまったく変化していないEmacsをどう捉えれば良いのか考えてみて、荒木飛呂彦と同じと捉えれば良いことが分かった。 荒木飛呂彦先生の比較表2020年版を作りました pic.twitter.com/ADUBHF0r6W — 男爵芋 (@Japerrin_1838) February 15, 2020 荒木飛呂彦先生(荒木飛呂彦と入力すると吸血鬼がサジェストされる)もまた10年間まるで時が止まっているかのように見た目の変化がないことが分かる。 つまり、Emacsは荒木飛呂彦であり、吸血鬼であり、石仮面をかぶって「人間を止めるぞ!ジョジョーーッ!!」といって、永遠の若さを手に入れていたのである。もしかすると、すでにエイジャの赤石を使って究極生命体になっていてもおかしくはない。 Emacsはハッカーのためのエディタ # 話を元に戻そう。Emacsがなぜ難しいのかだ。 端的に言えば、Emacsはリチャード・ストールマン(RMS)が作ったハッカーのためのエディタだからに他ならない。ハッカーのハッカーによるハッカーのためのエディタなのだ。 Emacsを使っているハッカーと言えば、ドナルド・クヌース(Donald Knuth)、グイド・ヴァン・ロッサム(Guido van Rossum)、まつもとゆきひろ(Matz)、スティーブ・イエギ(Steve Yegge)など、早々たるメンバーが顔を揃えている。それを聞いて、「じゃあ俺も」と憧れを抱くのは自然な流れだと言える。 しかし、グイドは「Emacsは新しいエンジニアには本当にオススメしない(つまり使うな)」と言っていて、その理由として「It just exists for old brain compatibility.(古い頭脳との互換性のために存在している)」と述べている。 Really I don't recommend Emacs to new developers. It just exists for old brain compatibility.